川上カーマスートラ

海外での生活

あっけない国境越え

愛しのベトナムを去り、ついにカンボジアへ。
といっても当初合流予定だったこちらの友人は今日本にいるらしく、一人で行動することになりそうだ。


サイゴンからは、陸路から入国できるので、せっかくなので国境越えを経験してみることにした。
前日、バックパッカー街の旅行代理店でバスを探しチケットを購入。
サイゴンをAM8:30に出発し、シェムリアップにPM5:30到着予定。
値段は500000VND(2500円くらい)。これにカンボジアのビザ代が35ドルなので、合計で6000円くらい。

がんばって早起きして、バス会社へ向かう。
ネットで13時間はかかると書いていたけれど、ちょっとグレードアップしたから9時間で着くのだろう、と優越感に浸りながらバスに乗り込む。
いざ出発。

出発直後、車が停止する。
何事かと思い外を覗けば、ローカルな市場が広がっており、朝日を浴びた鮮やかな野菜、果物が広がっていた。
繁華街を少し離れればこんな風景が、サイゴンにもまだ残っているのだな。聳え立つビル群の陰に、生きた生活があった。
さて、運転補佐みたいな人は慌ただしく外に出て行ったけれど、どうしたのだろう。

乗客の視線の的となった彼は、おやつや飲み物を抱えながら子供のような笑みで帰ってくる。
一瞬、配られるのかなと安易な期待を抱いたけれど、期待に終わるようだ。
運転手に、「さぁ出発だぜ」みたいなことを呼びかけ、おもむろに菓子袋を破りだす。
脱北とか、亡命とかの映像を見ているから、かなり厳戒態勢の中、緊張状態を維持しつつ行われるものだと思っていたけれど、遠足のようなテンションで国境越えに挑むことになりそうだ。

それはともかくちゃんと前向いて、安全運転を頼みますよ、といささかの緊張感はあった。
10分後、また停止する。

今度はなんだと思い、車窓から一面に広がる田畑に目をやる。
視界の片隅で運転手が立っションをしていた。

…これは本当に9時間で辿りつくのだろうか…。

バスの中は、欧米人が5人と、中国人1人、ベトナム人4人といった具合。
たまたま近くに座ったノルウェーの青年が、ギターを携えており意気投合する。
見るからに北欧系の人だなと、こちらは気付いていたけれど、彼は僕に「Where are you from? Canbodia?Vietnam?」と尋ねてくる。
おいおいおい、二択かよと思う。

この間も欧米の人に尋ねられて、「Japan」と言ったら、「は?」みたいな顔されたのだが、何が原因か全くわからない。
発音寄せにいって「ジュペェン」気味に言ってみるけれど、いっこうに通じる気配がない。
顔か。

たまたまノルウェーの青年が村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読んでいたため、「オー!ムラカミ!アイムジャパニーズ!」と答えたらすんなりと伝わった。照れ臭そうに「アイムソーリー」と言われたけれど、まったくだと思う。



12時30分、ようやく国境に到着。
この時点で4時間経過している。

地図を見てみればわかるけれど、絶対にあと5時間では着かない。

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これが国境付近。

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さて、ここからが山場だとまわしを締め直し、国境越えに精神統一する。
情報によると、40分から1時間かかるらしく、厳密な審査を通り抜けたうえで、ようやく隣国への渡航が認められるようだ。

いよいよ手に汗握る出国審査へ。

荷物をまずX線に遠し、危険物はないかチェック。
そこを通り抜ければ、ビザの確認。異常がなければカンボジア側での入国審査が許される。

スムーズにいき、「カンボジア側までバスで移動です」とのことなので乗り込むが、そこで例の遠足補佐にパスポートとビザ代を回収される。



「よおぉおおし!じゃあ、みんなでお昼ごはんに行くぞ!」

緊張状態の続く車内に突如放たれた「lunch time」というワードを理解するのに少々時間がかかった。
何を言っているのかさっぱり意味がわからなかったけれど、隣の人に聞いたらどうやら、「代行でビザ獲得しとくからその間にカンボジア側で飯食っといてくれ」とのことらしい。
おいおい、もう越えちゃってもいいのかと呆気にとられているうちに、もうカンボジアだった。



カンボジア側は途端に道が悪くなり、バス自体が電マのように小刻みに、しかし力強く震え続ける。
弱中強でいったら中くらい。

左右に続く高床式のカンボジア住居を眺めていると、僅か3、4kmの距離でこんなにも風景が変わるのかと驚いた。
その僅かな距離で、言葉も通じなくなるのだろうか。
人間を囲い込む国家の偉大さを感じた。



19時30分。
当初の予定を2時間オーバーし、シェムリアップに到着。
到着後すぐにカメムシにとまられ、首筋がめっちゃ臭くなる。
臭いまま日本人宿を探す。
そこで知り合った大学生と次の日アンコールワット行くことになった。

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