川上カーマスートラ

海外での生活

ナマステぇ

バンコクでの日々はすっ飛ばす。
ここの宿においては、パソコンいじったり、本読んだりして部屋にこもるよりも、リビングでダラダラしているほうが何かが起こって楽しいということだけは言える。

結局、どうしてもインドに行きたくなって、もう行く機会も限られてくるということも考えていたら、チケットを購入していた。
21日の早朝、スワンナプーム空港から、インドのコルカタ空港へと飛んだ。
深夜特急」の沢木耕太郎コルカタからスタートしており、デリーへと向かうという通路を選択している。
海外旅行者の間でも、一般的なルートではあるらしいのだけど、やはりここはインド、(というよりも僕の気まぐれな性格からか)気の赴くがままにぶらついている。


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インド散歩



本がマスクの代わりになるとは、インドに来るまでは気が付かなかった。
7月31日現在、プリーからダージリンに向かう20時間の列車において、運の悪いことにトイレの隣の席が当たってしまった。
いくら列車とはいえ、雨季のじめじめとした空気がどこまでもまとわりつき、時折鼻を刺す臭いがそのぬるい湿気に交じって、眠気をさらいに来る。
皆が寝静まるまで電気を消すということをしないため、直下に照らされていた僕は何かしら光を遮る手立てを考えねばならず、仕方なく読んでいた本を顔に落とすことにした。

するとどうだ。

今まで臭っていた刺激臭が、一瞬にしてシャットダウンされるではないか。
よしきた、これでいこうと決意したのだが、次の瞬間には隙間から、もそぉぉぉっとその臭いが攻めてくる。
ま、まずい!
「殿!敵兵が十二時の方角より侵入しております!」
「何をぉおう、塞げ塞げぇえええ!」
「ああ…!今度は六時の方角から…!」
「何をぉおぅ、塞げ塞ぐのじゃぁあ!」
「殿、インドの幼女が見ております…!」
「何をぉおぅ、」

インクの匂いで癒されたのも束の間、ページを開いて顔に擦り付けていた僕は、はたから見たら本に愛撫している変態に見えたのだろう。
顔から離すと、向かいの席の幼女がこちらを怪訝のまなざしで見ていた。

バンコクに荷物をほとんど置いてきたため、司馬遼太郎の書籍しか手元にあらず、まさかインドの列車内で自らの書籍がマスクとして機能しているとは、かの大先生も予想できなかっただろう。
戦国テンションなのもそのためだ。

けれど、幼女のまなざしで、何が正常か問われている気がした。
インドに来てから、たしかに僕も左手でお尻をふきふきしている。
それで今さら臭いとか、インドの人からしたら、甘えんじゃねぇとなるかもしれない。
郷に入れば郷に従え、じゃないけれど、あまりに感覚の許容範囲が広いインド人に囲まれて、まだまだたじろいでいる自分。


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f:id:eurybee:20160801041405j:plain列車から



はやく着かないだろうか。

順番は前後するけれど、出発したプリーはなかなかの田舎町で、のんびりしていいところだった。
インドでは有名な「サンタナ」という日本人宿の一号店がこの町にあり、そこに泊めてもらう。
バンコクで知りあった友人とも再会でき、野郎ばかりだったけれど、それはそれで楽しい滞在になるかもしれないなと思っていた。

しかし一泊目に蚊に咬まれまくって、僕は40度近い熱を出すことになる。
身体もきつかったけれど、何より臭いがきつかった。
かなり看病してもらってこういうのも申し訳ないけれど、かなり年季の入ったベッドに浸み入る僕の汗が魔術のように作用して、太古の記憶を呼び起こす。
今まで何人の放浪者がこのベッドに横たわったのだろうか、蓄積されたオイニーが溶解して、かわいそうな病人を包み込む。
さすがにゲロまでは吐かなかったけれど、4日間、ほとんど自室にこもり、陰謀論Youtubeを見ていたら治った。

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プリー


ここからの文は、ニュージャルパイグリという、ダージリン行の鉄道が出ている町のホテルで書いている。
20時半頃に到着したけれど、やはり見知らぬ土地に夜入るのはまだ怖いな。
住人が全員、睡眠薬強盗に見えてしまう。
この辺り、マイナー所のくせに一泊の値段がやたら高いしなんなんだ。

しかも泊まったホテルの部屋が怖すぎて風呂に入れない。
何の必要があって、赤いランプを浴室に使うのだろう。
鏡を見たら、ぜったいに鮮血に染まる女が立っているはずだ。
あ~いやだなぁ~怖いなぁ~。
明日にそなえて電気消さずに寝ます。


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