ベトナム ダナンの本屋
なにやら怪しげなアイツが排気ガスにまみれて立っている街、ここはダナン。
くたびれたお腹のポケットがなんともだらしなく、暑さのあまり唐突に被り物をはずす彼を見ていると、なんとかして助けてあげたくなる。
本物のドラえもんがいたら、気の利いた体温調節なんちゃらかんちゃらとかのひとつやふたつ出してあげるのだろうが、残念ながら僕はお金しかあげることが出来ない。
結局写真に納め、冷酷にその場を去る。
その数軒先に、人が次々と立ち入る店がある。子供が多い。
なんだろうと思い、覗いてみると本屋だった。
日本の本屋で働いていました。写真撮っていいですか?と理由にはなっていないが撮影許可を得る。
見たところ児童書専門店らしい。
雑貨を多数揃えており、学習用具は一通りある。
シンプルな内装。
奥には共同スペース。
読書する子やゲームする子。
漫画はすべて立ち読み可能。
外でみたアイツの本物がここにいた。
以前中国人に聞かれた、「あなたはなぜドラえもんが好きなんですか?」と、ほとんど「あなたはなぜ生まれてきたのですか?」という問いに近い哲学的命題を思い出す。
確かに、なぜ僕をはじめとして、世界各国の子供たちに青色猫はウケるのだろうか。
かわいいかと言われればそうでもない。ましてやかっこよさもない。
心に残っているというストーリーもほんの一握りだ。
なぜ僕はドラえもんが好きなのだろうか?
いや、僕たちは本当にドラえもんを好きなのだろうか?
ボードリヤールあたりにお説教をくらいたい。
コナンも人気があるみたい。
尾田栄一郎はどれほどの資産を持っているのだろうか。
子供が本当に多い。
久々に紙の匂いをかいで落ち着いた。
荷物の約3分の1が本という阿呆な海外旅行者は僕だ。
ミシェル・ウエルベックのプラットホームはタイにいるうちに読みたかったが、結局1ページも読めないままベトナムへ。
タイで読んでいたら風俗破産していたかもしれないのでそれはそれで正解だった。
スコールで外に出れないので、残りのページを今から読もうと思う。